【心電図検定対策ブログ 第2回】刺激伝導系を理解する 不整脈はどこで起こるのか

「不整脈」と聞くと、なんとなく身構えてしまいませんか?

 名前は知っていても、いざモニターで波形が崩れると、「これは危険な不整脈なのか、様子見でいいのか」判断に迷う場面は多いはずです。

 前回は、心電図が心臓の電気活動を記録する検査であり、電気は洞結節から始まり決まった道路(伝導路)を通って心室まで届けられる、というお話をしました。今回はその続きとして、電気の通り道である「刺激伝導系」を、場所ごとに丁寧に見ていきます。

到達目標は、「不整脈が体のどこで発生しているのか、イメージできるようになること」です。

 不整脈の名前を先に覚えるのではなく、「どこで何が起きているか」という地図を先に持っておくと、この先の学習がぐっと楽になります!

洞結節:電気の発電所

 洞結節は右心房の上部にある、電気信号の発生源です。前回、「電気の専用道路の発電所」とたとえましたが、通常はここが一定のリズムで電気を作り出し、「心臓のペースメーカー」として機能しています。

 洞結節の働きが乱れると、脈が遅くなる洞不全症候群や、逆に速くなる洞頻脈といった形で波形に現れます。発電所の出力そのものが不安定になっている、とイメージすると分かりやすいでしょう。

 臨床では、離床時に脈拍が上がりにくい、あるいは安静時から脈が急に速くなるといった場面に出会うことがあります。そんなとき「発電所そのものの出力が変化しているのかもしれない」という視点を持てるかどうかで、その後の観察ポイントが変わってきます。
 単に「頻脈です」と報告するのではなく、「洞結節由来の頻脈のように見える」と一言添えられるだけで、報告の質は大きく変わります!

房室結節:あえて電気を”ためる”中継地点

 心房から届いた電気は、いったん房室結節でスピードを落とします。ここは電気を「ためる」場所と考えるとイメージしやすいです。この遅延のおかげで、心房が収縮し終えてから心室が収縮する、という効率のよいタイミングが生まれています。

 房室結節での伝導に時間がかかりすぎたり、途中で途切れたりすると、「房室ブロック」と呼ばれる状態になります。少し足止めされているだけの軽度なものから、心房と心室の電気がまったく連動しなくなる重度なものまで、ブロックには段階があります。

 対応の緊急度はこの段階によって大きく変わるため、「中継地点でどれくらい足止めされているか」という視点が、重症度判断のヒントになります。特に急に出現した房室ブロックは、リハビリを中断して医師へ相談すべきサインになり得るため、見逃さない意識が重要です!!

His(ヒス)束・右脚・左脚:心室へ向かう主要道路

 房室結節を抜けた電気は、His束を通って左右の脚(右脚・左脚)に分かれ、心室全体へと広がっていきます。ここは、発電所から届いた電気を心室という工場の隅々まで届ける、主要な幹線道路にあたります。

 この部分で伝導に異常が起きると、「脚ブロック」と呼ばれる波形の変化として現れます。片側の道路が通行止めになっても、もう片方の道路を経由して電気は届くため、命に関わる緊急性は房室ブロックほど高くないケースが多い一方、心室の収縮するタイミングにズレが生じ、ポンプ効率が落ちる要因にもなります!

 とはいえ、もともと片側の脚ブロックがあった方に、もう片方の脚にも新たな異常が加わると、心室への電気の届け先が失われてしまう危険な状態になり得ます。「片方が通行止めでも、もう片方が生きているから大丈夫」という前提が崩れていないかを確認する視点も、覚えておくと役立ちます。

Purkinje(プルキンエ)線維:心室全体への配電網

 His束・脚を通った電気は、最終的にPurkinje線維という細かい配電網を通じて、心室の筋肉一つひとつに届けられます。ここまで来て初めて、心室全体がほぼ同時に収縮できる状態が整います。

 この配電網のどこかで異所性の電気(本来とは違う場所からの興奮)が発生すると、「心室性期外収縮」や「心室頻拍」といった、心室由来の不整脈につながります。
 心室由来の不整脈は血行動態への影響が大きくなりやすいため、モニターで気づいた際は速やかな報告が必要になる場面が多い、という点も押さえておきたいところです。

副伝導路:本来ないはずの”裏道”

 最後に紹介するのは副伝導路です。これは、通常の刺激伝導系とは別に存在する、生まれつきの余分な電気の通り道です。

 正規の道路(房室結節)を経由せず、電気が裏道を通って心室に直接届いてしまうことで、「WPW症候群」のような不整脈の原因になります。裏道の存在によって電気がショートカットしたり、場合によっては正規ルートと裏道を電気がぐるぐると回り続けてしまう(リエントリー)ことで、頻拍発作につながることもあります。

 普段は無症状で経過している方も多く、健診や心電図検定の学習で初めて存在を知る、という方も少なくありません。ただし、いざ頻拍発作が起きたときには、通常の不整脈とは対応の考え方が異なる場合があるため、「正規ルート以外にも道があり得る」という前提を知っておくこと自体に意味があります。

電気の地図を頭に描いてみる

 ここまで6つの場所を見てきましたが、一度に全部を覚えようとしなくて大丈夫です!!

まずは「発電所(洞結節)→中継地点(房室結節)→幹線道路(His束・脚)→配電網(Purkinje線維)」という大きな流れと、そこに「裏道(副伝導路)」が存在し得る、という全体像だけ持っておいてください!

 不整脈に出会うたびに、「これはどの区間の異常だろう」とこの地図に照らし合わせて考える。この繰り返しが、暗記ではなく理解として不整脈を捉える力を育ててくれます。

第2回のポイント整理

洞結節は電気を作る発電所房室結節は電気をためる中継地点
His束・右脚・左脚は心室へ向かう主要道路Purkinje線維は心室全体への配電網
・副伝導路は生まれつきの”裏道”で、正規ルートを経由しない不整脈の原因になる
・不整脈は「電気の地図」のどこで起きているかによって、緊急度も対応も変わってくる

まとめ

 不整脈の名前を一つひとつ暗記するのではなく、「刺激伝導系のどの区間で起きている不整脈なのか」という地図を持って見ていくと、初めて見る波形にも落ち着いて対応できるようになります。臨床で「これはどこの異常だろう」と考えるクセをつけることが、判断力を育てる一番の近道です!!

次回・第3回では、「【心電図検定対策ブログ 第3回】心電図波形の基本 P波・QRS波・T波を理解する」についてです。

地図が頭に入ってきたところで、次はいよいよ「波形そのもの」を読み解いていきましょう。
 

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